「今までは気合で抑え込んで、我慢して乗り越えるほうを選んでいたんです」
「でも、もう抑え込めないというか……普通に出ちゃうんです」
施術室のベッドの横で、少し戸惑うようにそう教えてくださったMさん。
「最近、なんだか頭打ち感がある」「今まで我慢できていたことが、急に耐えられなくなって感情があふれてしまう」と感じることはありませんか。
施術室での対話とからだの様子
Mさんはご予約の際、「最近、頭打ち感を感じている」と伝えてくださいました。
お話を伺ってみると、「溜め込んでいたものなのか、新しいことが起きているのかはわからないけれど、前みたいに気合で乗り越えられなくなって」と、ご自身では「毒出しの期間なのかな」と捉えていらっしゃいました。
一見すると、感情がコントロールできなくなって後退してしまったように思えるかもしれません。
でも、私は「それ、すごくいいことなんですよ」とお伝えしました。
今までは、からだもこころも張りつめていて、感情を外に出す余裕さえなかった。奥深くに火種があることには気づいていたけれど、フタを固く閉めて必死に踏ん張ってきたのです。
それが今、あふれ出てきたということは、からだとこころに少し余裕ができた証拠。外に出せるだけのスペースが生まれたからこそ、溜まっていたものが外へと抜け出そうとしてくれているのです。
その日のMさんは、肩や腰のあたりが重たく、背中と上半身全体に硬さがありました。
「ここは安全な場所だよ」と語りかけるように、背中や上半身の緊張をそっとほどいていくと、施術が進むにつれて硬さはすーっと抜けていきました。
施術が終わって立ち上がると、Mさんは教えてくださいました。
「上半身がすごく軽くなりました。本当に、ぼーっとできたみたいです」
そして、こう続けてくださったのです。
「ぼーっとしていても、いろんな考えが浮かんできちゃうんですけど……『それはそれでいいか』と思えるようになって」
「以前は疲れてくると、『こんなこと思っちゃダメ』『あれもダメ、これもダメ』って自分を責めて、それですごく疲れていたんです」
「でも今は、『いつも全部喋らなくてもいい』『考えが違うのもしょうがないよね』って、時間が過ぎるのを待てるようになってきました」
ぎゅっと握りしめていた手がふわっと開き、自分を責める悪循環から静かに抜け出していらっしゃる姿が、そこにありました。
からだで起きていたこと・安心を思い出すアプローチ
なぜ、気合で我慢していた感情があふれ出し、その後に「それはそれでいいか」としなやかに思えるようになったのでしょうか。
私たちが「我慢しなきゃ」「乗り越えなきゃ」と自分を奮い立たせているとき、からだの中では「脳の警戒モード」がフル稼働しています。
警戒モードに入った脳は、外からのプレッシャーに耐えるために、首や肩、背中の筋肉を鎧のように硬く固め、感情を感じるセンサーに麻酔をかけるようにフタをしてしまいます。
「こんなこと思っちゃダメ」と自分を否定してしまうのも、脳が必死に自分を守ろうとしていた防衛反応のひとつなのです。
でも、警戒モードをずっと続けていれば、いつか限界がやってきます。
「頭打ち感」や「感情が抑え込めない」という感覚は、脳とからだから届いた「もう気合で我慢するのは終わりにしていいよ」という、サインだったのだと思うのです。
Ten整体院のアプローチは、筋肉を力でほぐしたり、考え方を無理やりポジティブに変えさせたりするものではありません。
無意識の緊張をそっと解き、脳に「もう戦わなくて大丈夫だよ」という安心を届けていきます。
からだが芯から安心を思い出すと、鎧がふっとほどけ、深く息が吸えるようになります。
すると、頭の中にあった「これダメ、あれダメ」という厳格なブレーキが外れ、「言ってもいいし、言わなくてもいい」「違っていてもいいし、待ってもいい」という、しなやかで広い選択肢が自然とこころの中に広がっていくのです。
限界まで我慢するのをやめて、自分との信頼関係を取り戻す
「今までなら気合で乗り越えられたのに」と、立ち止まってしまったご自身を前にして、焦りや不安を感じたことがあったかもしれません。
それは、あなたが弱くなったからでも、後退してしまったからでもありません。
感覚にフタをしてまで、気合と根性で今日まであなたを守り抜いてくれたご自身のからだに、「今まで必死に守ってくれてありがとう」と、そっと声をかけてあげてほしいのです。
でも、「もうこれ以上、自分をすり減らすのは終わりにしたい」「自分との信頼関係を取り戻して、これからの人生を自分の足で自分らしく歩いていきたい」と願うなら、もう一人で抱え込まなくて大丈夫です。
どんなに少しずつだとしても、その変化の積み重ねこそが、あなたがあなたらしく生きていくための確かな土台になります。
正しいことをじっくり続けていけば、こころもからだも必ず応えてくれる。
私は、そう信じています。
