「首の痛みが全然取れなくて……良くなってきたかなと思ったら、今週また痛くなっちゃって」
「昨日、ちょっと笑った拍子に力が入ったら、せっかく良くなりかけていた痛みがまたグッと強くなった気がして。悔しいです」
先日、施術室の椅子に腰掛けながら、Aさんが少し寂しそうにそう打ち明けてくださいました。
日頃からお仕事を真面目に頑張っていらっしゃるAさん。
手元をじっと見つめる作業が多く、首や肩には日々の緊張が静かに積み重なっていました。
「歯磨きをしていて、うがいをするときに上を向くのが辛いんです。いつも、うがいがスムーズにできるかどうかで『良くなってきたかな』って判断していたから……」
車の運転中も、安全確認で横を向くのが痛くて、からだごと振り向かなければならなかったと言います。
せっかく少し軽くなったと感じていたからこそ、「また痛くなっちゃったのかな」「私のからだ、本当に変わるのかな」と不安になってしまうお気持ち、とてもよく分かります。
施術室での対話とからだの様子
からだの状態を確かめさせていただくと、右の首筋の奥にずっしりとした重さがあり、お腹の奥(おへその周り)にも緊張が残っていました。
「痛みの大きさを、一番辛かったときを『10』として比べてみましょうか」とお話ししながら、無理な力を加えずに、からだが安心できる姿勢を一つひとつ探していきます。
呼吸を整えて、鼻からゆっくりと息を吸って、吐いていただく。
足元の緊張をストンと抜くような優しい動きを重ねていくと、
「横を向くのが、さっきより少し向きやすくなりました」
と、Aさんの表情がふっと和らぎました。
さらに、うつ伏せになっていただき、足元から優しく触れていくと、強張っていた足がふわふわと柔らかくほどけていきます。
「首の痛み、最初が10だとしたら、今どれくらいですか?」とお聞きすると、
Aさんは驚いたように「……全然ないです」と答えてくださいました。
最後に仰向けで頭にそっと触れさせていただいたとき、Aさんはぽつりとこう呟かれました。
「頭を触られているとき、なんだか『ふわーっ』として……すごくいい感じでした」
起き上がっていただいたとき、Aさんの首の奥にあった重さは、すっと静かに引いていました。
「良くなりかけたのにまた痛くなると、悔しいですよね。でもね、からだは決して諦めているわけではなくて、すごい力で変わろうとしているんだと思いますよ」
からだで起きていたこと・安心を思い出すアプローチ
痛みが一度引いたあとにまた顔を出すと、「せっかくのケアが無駄になったのかな」と自分を責めてしまいそうになるかもしれません。
でも、決してそんなことはありません。
長年、お仕事や日々の暮らしで緊張を続けてきたからだは、無意識のうちに「首を守らなきゃ」と強い警戒モードに入っています。
ちょっと笑った拍子の反動や、ふとした日常の動作で痛みが出たのは、その動作が悪かったのではなく、からだが「まだ油断しちゃダメだ」と一生懸命に首を守ろうとブレーキを踏んでくれたサインなのかもしれません。
回復のプロセスは、一直線の右肩上がりだけではありません。
波のように行ったり来たりしながら、少しずつ「痛んでいる時間を引きずる長さ」が短くなったり、緊張から「ふっと安心できる自分」へと持ち直すのが早くなったりしていくものです。
施術室で頭に触れたときに感じていただいた「ふわーっとする感覚」。
それこそが、脳の警戒モードが解けて、からだが本来の力を思い出した瞬間です。
無理に揉んだりボキボキ鳴らしたりしなくても、からだが「ここはもう安全なんだ」「力を抜いても大丈夫なんだ」と安心できたとき、こころとからだは自然とゆるみ、痛みを静かに手放していきます。
限界まで我慢するのをやめて、自分との信頼関係を取り戻す
「また痛くなった」とからだを責めるのではなく、
「あんなに緊張していたのに、触れたらふわーっと緩む力があるんだな」
「私のからだ、ちゃんと応えようとしてくれているんだな」
と、ご自身のからだが持つ力を信じてあげること。
そうやって小さな安心を重ねていくことこそが、痛みを卒業していくための確かな一歩になります。
でも、「もうこれ以上、自分をすり減らすのは終わりにしたい」「自分との信頼関係を取り戻して、これからの人生を自分の足で自分らしく歩いていきたい」と願うなら、もう一人で抱え込まなくて大丈夫です。
どんなに少しずつだとしても、その変化の積み重ねこそが、あなたがあなたらしく生きていくための確かな土台になります。
正しいことをじっくり続けていけば、こころもからだも必ず応えてくれる。
私は、そう信じています。

