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「リハビリで先生に『歩き方を忘れちゃったんだね』って言われたんです。手術したのに、どうやって力を抜いて歩けばいいのか、自分でも全然わからなくなっちゃって……」

施術室の椅子に腰掛けながら、そうぽつりとお話ししてくださった方がいらっしゃいました。

「仕事でちょっと呼ばれたら、小走りに急いで走れるくらいになりたいんです。でも、歩くだけでも反対の足が痛くなってしまって……手術しても変わらないのかなって、不安になってしまって」

誰かのために一生懸命働いて、日常を一生懸命支えてきたからこそ、「早く元の生活に戻りたいのに、からだが思うように動いてくれない」という焦りや不安は、本当に切実なものだと思います。

施術室での対話とからだの様子

介護のお仕事をされているAさん。

約1年前に股関節の手術を受け、退院後2ヶ月ほどで職場に復帰されました。

お仕事柄、どうしても立ち仕事が多く、足腰には負担がかかります。

手術した側の足をかばいながらお仕事や生活を続けているうちに、今度は反対側の足首から足の裏、土踏まずのあたりに強い痛みが出るようになってしまいました。

さらに、その足裏の痛みをかばっているうちに、反対側の股関節にまで違和感が広がってしまったそうです。

「少しでも楽になりたくて別の整体に行ってみたんですが、骨盤が歪んでいると言われてぐいぐい押されたら、かえって痛みが強くなってしまって……」

そんな経緯を経て、当院にいらしてくださいました。

実際にAさんのからだを拝見してみると、痛みを感じている足の裏だけでなく、背中や腰の筋肉がカチカチに緊張して固まっていました。

でも、背中や腰をそっと触らせていただいても、Aさんご自身は「硬いのか痛いのか、あんまり感覚がわからないんです」とおっしゃいます。

それは、痛みに耐えて踏ん張り続けてきた時間が長かったために、からだが感覚をあえて鈍らせて、これ以上つらさを感じないように守ってくれていたサインでした。

痛みを我慢しながら毎日を乗り切ろうとするとき、脳は「今は非常事態だ」と判断して、全身の筋肉をぎゅっと固めてしまいます。

その状態が長く続くと、無意識に力が入るのが当たり前になってしまい、「力を抜く」という感覚そのものを、脳が忘れてしまうことがあるのです。

からだで起きていたこと・安心を思い出すアプローチ

からだがカチカチに固まっているとき、その硬い場所を強い力でぐいぐい揉んだり、無理に引っ張ったりしても、からだはなかなか緊張を解いてくれません。

それは、お部屋の明かりを消したいときに、電球を叩き割って消そうとするようなものです。

大切なのは、電球を力づくで壊すことではなく、壁にあるスイッチをそっとパチッとオフにしてあげること。

からだに「もう警戒しなくて大丈夫だよ」「守らなくても安全だよ」と安心の合図を送ってあげることです。

また、Aさんのように手術を経験された方の場合、切った傷跡そのものはきれいに治っていても、周囲の皮膚や組織をきゅっと引き寄せて、全身のバランスを無意識に引っ張ってしまうことがあります。

そこで当院では、無理な矯正や強い刺激は一切行わず、皮膚がスムーズに動きやすくなるよう傷跡の緊張をそっと整えるテーピングを行ったり、脳が深い安心を思い出せるような微細な調整を行いました。

調整の後、ベッドから降りて立っていただくと、Aさんは驚いたように足元を見つめられました。

「あれ……?さっきまで立っているだけでふらふらしていたのに、すっと安定しています」

「足の裏に体重をかけても、さっきみたいに痛くないです。半分くらいになりました」

「なんだか、全身がシュッとして軽くなった気がします」

無理に力を抜こうと頑張らなくても、からだが「安心」を思い出すと、こわばっていた筋肉は自然とほどけ、本来持っているバランスを取り戻し始めます。

限界まで我慢するのをやめて、自分との信頼関係を取り戻す

「力の抜き方がわからない」「歩き方を忘れてしまった」と感じるのは、あなたがダメだからでも、努力が足りないからでも決してありません。

長い間、痛みを一人で抱え込みながら、弱音を吐かずに毎日を懸命に支えてきたからこそ、からだがあなたを守るために必死に踏ん張ってくれた結果なのです。

でも、「もうこれ以上、自分をすり減らすのは終わりにしたい」「自分との信頼関係を取り戻して、これからの人生を自分の足で自分らしく歩いていきたい」と願うなら、もう一人で抱え込まなくて大丈夫です。

どんなに少しずつだとしても、その変化の積み重ねこそが、あなたがあなたらしく生きていくための確かな土台になります。

正しいことをじっくり続けていけば、こころもからだも必ず応えてくれる。

私は、そう信じています。




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