「人に聞いて、何か指摘されるのが不安で……どうしても動けなくなっちゃうんです」
施術室のベッドの傍らで、Aさんが少し言葉を探すように、そう打ち明けてくださいました。
何かを確認したい。質問したい。
でも、「こんなことも分からないの?って思われたらどうしよう」「間違っていたらどうしよう」「何か言われたら怖いな」と、こころの奥がきゅっと締め付けられる。
頭の中は色々な考えでいっぱいになって、ごちゃごちゃして、足が止まってしまう。
真面目で、日頃から周りの期待に応えようと一生懸命に頑張ってきた方ほど、そんな経験があるのではないでしょうか。
施術室での対話とからだの様子
「前回の後、どうだったかな?」とお聞きすると、Aさんは少し表情を和らげて答えてくださいました。
「気持ち的に言うと、あまり悪くなった感じはなかったです。前みたいにぐっと落ち込むこともなくて」
前回の施術のとき、Aさんは「人に聞いて指摘されるのが不安で動けないのを減らしたい」というテーマをご希望されていました。
「人に聞いて指摘されるのが不安で動けないっていうテーマ、今日はどう感じている?」
そう尋ねてみると、Aさんはご自身の内側の感覚を確かめるように、静かに教えてくれました。
「前ほどではないです。まだちょっと動けてない部分はあるけど、向き合っているときの感覚が変わってきていて……」
「前より、頭の中のごちゃごちゃ感が減ってきたね」とお伝えすると、Aさんも「うん」と頷いておられました。
実際にベッドに横になっていただき、お腹やからだの状態に触れていきます。
おへその周りや右側のお腹にそっと手を触れると、「痛い」「ちょっと固いですね」という感覚とともに、「あ、そこ、くすぐったいです」と笑い混じりに教えてくださいました。
実は、からだに触れられたときに「くすぐったい」と感じるのは、神経が過敏になっていて、からだがギュッと防衛モードに入っているときによく見られるサインなんです。
からだで起きていたこと・安心を思い出すアプローチ
「人に指摘されるのが怖い」「何か言われたらどうしよう」と不安になるとき、私たちの頭だけでなく、からだの奥深くでも大きな警戒モードが作動しています。
特に、お腹やみぞおちは、感情や自律神経の緊張が真っ先に集まる場所です。
誰かに責められないように、傷つかないようにと、無意識のうちにお腹を固めて、自分を守るための頑丈な鎧を着込んでいたのかもしれません。
頭の中がごちゃごちゃして動けなくなってしまうのも、決してあなたの意志が弱いからでも、やる気がないからでもありません。
脳が「危ないぞ!気をつけて!」と警報を鳴らし続けているからこそ、安全を確かめるために思考がフル回転して、からだが一時的にフリーズ(固まる)してしまっていただけなんです。
だからこそ、Ten整体院では「もっと勇気を出して行動しよう」と無理に背中を押すことはしません。
まずは、緊張をふっと緩めて、脳に「ここは安全だよ」「もう大丈夫だよ」という安心のサインを届けてあげること。
言葉で自分を奮い立たせるのではなく、からだの警戒スイッチを静かにオフにしていくアプローチを行っていきます。
施術を終えて立ち上がっていただいたとき、Aさんはスッと背筋が伸びて、呼吸が深く通るような柔らかなお顔をされていました。
「まだ動けていない部分もある」とおっしゃっていましたが、頭のごちゃごちゃが静まり、「向き合っているときの感覚が変わった」と実感できたこと自体が、からだが安心を思い出し始めている何よりの確かな証拠です。
肉体的な軽さだけでなく、「面倒くさい」「億劫だな」と感じるこころの重さも、からだが緩むのと一緒に少しずつ軽やかになっていきます。
朝起きたときや、夜寝る前、あるいは仕事の前に、ほんの数分でも自分のからだに手を当てて深呼吸してみる。
「整える時間そのものを、楽しんでみてくださいね」とお伝えして、その日の施術を終えました。
限界まで我慢するのをやめて、自分との信頼関係を取り戻す
「人に聞けない自分」「指摘が怖くて固まってしまう自分」に対して、「どうして私はいつもこうなんだろう」と責めてしまう人は少なくありません。
でも、その怖さや固まってしまう反応は、これまであなたが一生懸命に傷つかないよう自分を守ってきた、からだの防衛反応だったのかもしれません。
まずは「怖かったんだね」「守ってくれていたんだね」と、その頑張りを受け止めてあげることから始まります。
でも、「もうこれ以上、自分をすり減らすのは終わりにしたい」「自分との信頼関係を取り戻して、これからの人生を自分の足で自分らしく歩いていきたい」と願うなら、もう一人で抱え込まなくて大丈夫です。
どんなに少しずつだとしても、その変化の積み重ねこそが、あなたがあなたらしく生きていくための確かな土台になります。
正しいことをじっくり続けていけば、こころもからだも必ず応えてくれる。
私は、そう信じています。
