「キッチンでご飯を作るとき、無意識に左足ばかりに重心をかけて立っちゃうんです」
施術室のベッドに腰掛けながら、そうお話ししてくださった方がいらっしゃいました。
「まっすぐ立とうとすると、なんだか張るような違和感があって。気づくと、片足に体重を逃して立っているんですよね」
日々の家事やお仕事の中で、同じように「そういえば私、いつも片足立ちになっているかも」と思い当たる方も多いのではないでしょうか。
施術室での対話とからだの様子
先日来院されたBさんは、保育士として日々子どもたちと向き合っていらっしゃる女性です。
夏休みはお子さんの受験サポートなども重なり、ご自身のことはどうしても後回しになってしまうほど、慌ただしい日々を過ごされていました。
以前気になっていた肩の重さは落ち着いてきていたものの、ここ最近になって新しいサインが現れたそうです。
「ずっと痛いわけじゃないんですけど、立ち上がる瞬間に、右の膝が一瞬『痛っ』となるんです。かばいながら暮らしている感じがして」
さらにお話を伺うと、普段の生活でもこんな変化に気づかれていました。
「お仕事でエプロンをつけると、必ず右の肩だけがずり落ちてくるんです。肩自体は痛くないんですけど、右側全体がおかしいのかなって」
まっすぐ立とうとすると右側に突っ張り感があるため、料理をするときも自然と左足に体重を預けてバランスをとっていたBさん。
立ち上がる瞬間の膝の痛みは、まさにそのバランスの偏りを全身で受け止めていたサインでした。
からだで起きていたこと・安心を思い出すアプローチ
「膝が痛む」と聞くと、多くの方は「膝そのものが悪くなってしまったのかな」と不安になります。
でも、からだはいつだって、ひとつの場所だけで動いているわけではありません。
保育士としてしゃがんだり抱っこしたりする毎日、そしてお家での忙しいサポート。
休む間もなく動き続ける中で、Bさんのからだは倒れてしまわないように、全身を使って懸命にバランスをとってくれていました。
右肩が下がり、骨盤の傾きが生まれる中で、
「まっすぐ立つと突っ張るから、左足で支えよう」
と、無意識のうちに体重を逃がしてくれていたのです。
そうやって毎日を踏ん張って支え続けてくれた結果、立ち上がる瞬間の大きな負荷が、右の膝にサインとして現れていました。
つまり、膝の痛みは「からだが壊れた合図」ではなく、
「ここまで全身でバランスをとって頑張ってきたよ」と教えてくれているサインなのです。
痛む場所だけをどうにかしようとするのではなく、
頭から肩、背中、足先まで、全身をぎゅっと固めていた警戒の緊張をそっとほどいてあげること。
「もうそんなに踏ん張り続けなくて大丈夫だよ」とからだが安心を思い出すと、無意識の偏りは自然とほどけ、からだは自分自身の真ん中の軸へと立ち戻っていきます。
限界まで我慢するのをやめて、自分との信頼関係を取り戻す
片足に重心をかけてしまうことも、肩が落ちてしまうことも、決して「あなたの姿勢が悪いから」ではありません。
そのアンバランスさは、忙しい毎日を今日まで倒れずに乗り切るために、あなたのからだが編み出してくれた知恵であり、頑張りの証です。
だからこそ、「こんな姿勢じゃダメだ」と自分を責めないでいてほしいのです。
「今まで支えてくれてありがとう」とからだを労わり、限界を迎える前にそっと力を抜いてあげる時間を作ること。
それは、自分のからだと結び直す、とても温かい信頼関係の第一歩になります。
でも、「もうこれ以上、自分をすり減らすのは終わりにしたい」「自分との信頼関係を取り戻して、これからの人生を自分の足で自分らしく歩いていきたい」と願うなら、もう一人で抱え込まなくて大丈夫です。
どんなに少しずつだとしても、その変化の積み重ねこそが、あなたがあなたらしく生きていくための確かな土台になります。
正しいことをじっくり続けていけば、こころもからだも必ず応えてくれる。
私は、そう信じています。
