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「人から肩を触られて『えっ、すごい固いね!』って言われるんですけど、自分では全然自覚がないんです」

「長年ずっとこの状態が一緒なので、凝っているのかどうかもよく分からなくて……」

施術室のベッドの横で、少し困ったように、でも穏やかにそうお話ししてくださったAさん。

仕事や日々の暮らしの中で、当たり前のように誰かのために気を配り、責任を持って毎日を過ごされている方です。
「痛くて動けない」というわけではないけれど、人から指摘されて初めて「私のからだって、そんなに固くなっているのかな」と気になったと教えてくださいました。

施術室での対話とからだの様子

この日、Aさんに最近の調子を伺うと、食欲もしっかりあって、以前気になっていた頭痛も落ち着いて過ごせているとのことでした。

ただ、首や肩の様子についてお聞きしてみると、少し首をかしげながらこう話してくださいました。

「首や肩がゴリゴリになっているのは、普段自分ではあまり分からなくて。辛いっていう感じもほぼないんです」
「でも、人に触られると『すごい固いね』って驚かれますし、確かにこうして押してもらうとちょっと痛気持ちいいので、張っているんだろうなって思うくらいで……長年ずっと一緒なので、これが普通になっちゃっているのかもしれません」

さらに、足元についても気になることをお話ししてくださいました。

「施術してもらった後は足元に安定感がある気がするんですけど、普段過ごしていると、気がつくとグラグラしてバランスが取りづらいような、違和感がある時があって……」

首や肩のこりの自覚がないこと。そして、足元のグラグラする不安定感。
一見別々のことのように見えますが、実はどちらも、からだがずっと気を張り続けてきたサインでした。

実際にベッドに横になっていただき、首やお腹、足首などをそっと確認していきます。

最初におへその周りやからだにそっと触れたとき、Aさんは「ちょっとくすぐったいな」と身をすくめられました。

実は、触れられたときに「痛い」ではなく「くすぐったい」と感じるのは、神経が過敏になっていて、からだが「これ以上刺激が入らないように」と無意識に身を守ろうとしている防衛のサインでもあります。

首や背中にも、長年ひとりで踏ん張ってきた緊張がぎゅっと詰まっていました。

当院では、強い力でグイグイ揉みほぐしたり、無理にゴリゴリ押したりする施術は行いません。

「もう警戒しなくて大丈夫だよ」と脳に伝えるように、バランスを優しく優しく調律していきます。

静かに呼吸を合わせながら調整を進めていくと、Aさんの呼吸が少しずつ深く、お腹まで通るようになっていきました。

しばらくして、先ほどくすぐったかった場所に再びそっと触れてみます。

「……あ、さっきのくすぐったさが、だいぶなくなりました」

最初は「10」の張りだった首のこわばりも、静かに調整を重ねるうちに「8」になり、「6」になり、最後には「5」と、およそ半分ほどの柔らかさに緩んでいきました。

最後にベッドから起き上がり、床に立っていただきます。

「……あ、さっきよりも足元に安定感があります!」
「グラグラしなくて、地面にちゃんと足がついている感じがします」

そう言って見せてくださったAさんのホッとした笑顔に、施術室の空気がふっと温かく緩みました。

からだで起きていたこと・安心を思い出すアプローチ

人に「すごく固い」と驚かれるのに、自分では肩こりや首こりを感じない。
そんなとき、「私のからだはおかしいのかな」「鈍感なのかな」と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

でも、それは決してあなたが鈍感だからではありません。

むしろ、それだけ長い間、誰かのために、あるいは日々の役割を果たすために、限界を超えて頑張り続けてきた証拠なのです。

もし、首や肩の激しいコリや痛みを24時間まともに感じ続けていたら、日々の家事やお仕事、生活が立ち行かなくなってしまいますよね。

だから脳は、あなたを守るために「感覚のボリューム」をぎゅっと下げて、あえてコリや重さを感じないように麻痺させてくれていたのです。

触られたときの「くすぐったさ」や、足元の「グラグラする不安定感」も同じです。

脳がずっと警戒モード(交感神経優位)のまま臨戦態勢をとっていると、神経が過敏になって防御反応が強くなり、全身がこわばって足裏の接地感覚やバランス感覚も乱れやすくなります。

だからこそ、外側から強い力で無理に揉みほぐすのではなく、脳に「ここは安全だよ」「もう戦わなくて大丈夫だよ」という安心の信号を届けてあげることが大切です。

脳の警戒スイッチがオフになれば、からだは自ら緊張をほどき、本来の柔らかな呼吸と、大地を踏みしめる安定感を思い出してくれます。

限界まで我慢するのをやめて、自分との信頼関係を取り戻す

からだは、あなたが気づかない間も、片時も休むことなくあなたを守ろうと働き続けてくれています。

自覚がなかったのも、くすぐったかったのも、すべて「あなたを守るためのからだの愛ある防衛」でした。

それだけ長い間、あなたのからだは懸命にあなたを支え続けてくれたのです。

でも、「もうこれ以上、自分をすり減らすのは終わりにしたい」「自分との信頼関係を取り戻して、これからの人生を自分の足で自分らしく歩いていきたい」と願うなら、もう一人で抱え込まなくて大丈夫です。

どんなに少しずつだとしても、その変化の積み重ねこそが、あなたがあなたらしく生きていくための確かな土台になります。

正しいことをじっくり続けていけば、こころもからだも必ず応えてくれる。
私は、そう信じています。




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