「朝、少し腰が固まる感じはあるんですけど……でも、動き出せば前より全然大丈夫なんです」
先日、施術室に入ってこられたAさんは、ふっと表情を緩めながらそう教えてくださいました。
「痛いのは、足の親指の筋のあたりが少し気になるくらいで。あとは特に困ってないんです」
以前は全身の重さやつらさを抱えていらっしゃったAさん。
ふと気づいた日常の小さな変化を、穏やかな声で伝えてくださいました。
施術室での対話とからだの様子
Aさんが通院間隔を伸ばして、定期的に通ってくださるようになってから、数ヶ月が経ちました。
「おー、すごいですね! 前と比べたら本当に変わってきましたね」
私がそうお伝えすると、Aさんは嬉しそうに頷かれました。
「腰も、たまに朝ちょっと固まることはあるんですけど、少し動いているうちに気にならなくなるんです。以前の痛さと比べたら、全然違います」
もちろん、日々の生活の中でお散歩のときに足をかばってしまったり、日常の姿勢の癖で足や腰に少し負担がかかったりすることはあります。
ベッドの上で緊張をそっとほどくアプローチを行っていきました。
最初にお聞きしたときに「10」だった痛みやじんじんする感覚が、施術を進めるうちに「6」「5」と落ち着いていき、最後には「あんまり痛くないです」と教えてくださいました。
お腹のくすぐったさや腰の硬さも、ふーっと息を吐くごとにほどけていきました。
そして施術の最後に、次回の予約についてお話ししたときのことです。
「今までは2週間おきくらいで来ていただいていましたけれど、今回は少し間隔を伸ばして、3週間後にしてみませんか?」
「えっ、大丈夫でしょうか」と不安になる方もいらっしゃるのですが、Aさんは落ち着いた様子で頷かれました。
「もし途中で『あれっ、ちょっと重いかも』と感じたら、いつでも戻して大丈夫ですからね。まずは少し伸ばして、からだの様子をみてみましょう」
からだで起きていたこと・安心を思い出すアプローチ
痛みが全く出ないことだけが、「良くなった」のサインではありません。
疲れがたまったり、日常で負担がかかったりすれば、生きている限り誰でもからだが固まることはあります。
本当に大切なのは、「絶対に固まらないこと」ではなく、「固まっても、自分で自然とゆるんで安心へ立ち戻れること」なのです。
以前のAさんは、からだが強い緊張(警戒モード)に包まれていたため、一度痛みが出るとそこから抜け出せず、全身がガチガチに固まってしまっていました。
脳が「ここは危険だ」と警報を鳴らし続けていたからです。
でも、施術を重ねてからだが「ここはもう安全なんだ」「力を抜いても大丈夫なんだ」という安心を思い出していくと、脳の過剰な警報装置が静かにオフになっていきます。
すると、からだが本来持っている「自己調整力」が目を覚まします。
たとえ朝起きたときに腰が少し固まっていたとしても、動き出すうちに自分で巡りを取り戻し、すーっと軽くなっていく。
痛みや緊張を引きずる時間が、どんどん短くなっていくのです。
だからこそ、「2週間もたないと不安」だった状態から、「3週間空けてみても大丈夫かもしれない」という安心感へと、自然にステップを進めることができるのですね。
限界まで我慢するのをやめて、自分との信頼関係を取り戻す
「動き出せば大丈夫」と思えるようになったこと。
それは、あなたのからだが本来のしなやかさを取り戻し、自分で自分を回復させる力を思い出してくれた、確かなサインです。
痛みに怯えて過ごしていた長い時間の中、あなたのからだは懸命にあなたを支え続けてくれたのです。
でも、「もうこれ以上、自分をすり減らすのは終わりにしたい」「自分との信頼関係を取り戻して、これからの人生を自分の足で自分らしく歩いていきたい」と願うなら、もう一人で抱え込まなくて大丈夫です。
どんなに少しずつだとしても、その変化の積み重ねこそが、あなたがあなたらしく生きていくための確かな土台になります。
正しいことをじっくり続けていけば、こころもからだも必ず応えてくれる。
私は、そう信じています。
