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「前は上の方が痛かったんですけど、なんだか痛いところが変わってきて」

「腰っていうより、ふくらはぎより下というか、足首や足の指がすごく疲れているのを感じていて……」

施術室にいらしてベッドに腰掛けたAさんが、少し首をかしげながらそう教えてくださいました。

整体やケアを続けていると、「前につらかった場所は楽になったのに、今度は別の場所が痛くなってきた」「これって悪化しているのかな?」と不安を感じたことはありませんか。

施術室での対話とからだの様子

Aさんは前回の施術以降、ご自身のからだの使い方にも意識を向けていらっしゃいました。

「肩は無理すると痛くなりそうだったから、これ以上力を入れても使えないんだろうなって思って。ぐっと押すときは反対の手を使うように工夫してみたんです」

日常のなかに無理のない工夫を取り入れてくださったことで、以前気になっていた上半身の強い緊張は少し落ち着いてきていました。
お食事でも、鶏肉やお豆腐などタンパク質を意識して摂るように心がけていらっしゃるとのこと。からだの修復に必要な材料を、日々のなかでコツコツ届けてくださっていたのですね。

ただ、最近はお引越しをされたことでお家が広くなり、キッチンや部屋の中を歩く距離がぐんと増えたのだそうです。

「靴を履いて歩く時間自体はそこまで長くなくても、お家の中でよく歩くようになって。足首が硬くなりやすかったり、ふくらはぎが張る感じがあるんです」とAさん。

実際に立っていただいて様子を確認すると、Aさんは「足全体に疲れはあるけれど、強い痛みというわけではなくて……なんだかよくわからないんです」と言われました。

からだで起きていたこと・安心を思い出すアプローチ

「痛む場所が変わる」というのは、一見すると不調が移動したように思えるかもしれません。
でも、実はこれはからだにとって前進のサインでもあります。

人の脳は、一番強く危険を感じている痛みを最優先で感知するようにできています。
たとえば、首や肩、腰に強い張りや痛みがあるときは、脳はそのSOSで手一杯になり、他の場所の疲れや違和感のボリュームをぐっと下げて感じにくくさせているのです。

上半身の負担が減り、脳が「ここはもう緊急事態じゃないな」と判断して警戒モードを一段階ゆるめると、これまで隠れていた足や足首の疲労感が、ようやく表面に上がってきます。
つまり、痛い場所が変わったのではなく、「今まで麻痺させていたからだの声が、ちゃんと聴こえるようになってきた」ということなのです。

施術を進めていくにつれて、Aさんも「最初と比べると柔らかくて、奥まで届いている感じがする」「さっきより痛くないです」と、からだの変化を受け取ってくださいました。

施術を終えて再び立っていただいたとき、Aさんがふっと息をつきながら言われました。

「からだが、すごく緩んだ感じです」

「最初に来て立ったときは、疲れもわからないくらい元気なのかなって思っちゃうくらい何も感じていなかったのに……からだがもう、だるいです」

そうなんです。
脳が張り詰めて「頑張らなきゃ」と緊張モードに入っているときは、疲れそのものを麻痺させてしまい、元気だと錯覚してしまうことがあります。
それが、からだが深く安心を思い出すと、張り詰めていた糸がふっとほどけて、「実はこんなに疲れていたんだ」という本音をからだが素直に伝えてくれるようになるのです。

限界まで我慢するのをやめて、自分との信頼関係を取り戻す

「だるさ」や「疲れ」を感じられるようになること。
そして、「別の場所の違和感」に気づけるようになること。
それは、からだがあなたとのコミュニケーションを取り戻し始めた、とても大切な第一歩です。

どんなに少しずつだとしても、その変化の積み重ねこそが、あなたがあなたらしく生きていくための確かな土台になります。

正しいことをじっくり続けていけば、こころもからだも必ず応えてくれる。
私は、そう信じています。




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