「昨日、すごい頭痛だったんです。雨の前で、途中から雷が鳴って……。木曜日の朝も、めまいというよりは、頭のこのへんが別空間にいる感じというか。考えようとしても頭の回転が止まってしまって、なんだかパニックになりそうで怖かったんです」
先日、施術室でMさんが少し不安そうにそう打ち明けてくださいました。
「今日も、まだちょっとボワンとする感じが残っていて。ここから上が、なんだか違う空間にあるような感じがするんです」
天気が崩れる前や、台風が近づいてくるとき。あるいは生理の前になると、決まって頭が重くなったり、ふわふわして現実感が薄れるような感覚に襲われる。
「私のからだ、どうしちゃったんだろう」「このまま仕事や家事ができなくなったらどうしよう」と不安になってしまうお気持ちは、本当によくわかります。
施術室での対話とからだの様子
当院にいらしてくださるのが2回目のMさん。
前回初めていらした際にお伝えした「朝ごはんでしっかりタンパク質をとってみる工夫」を、「すぐやらないと続けられないから」と、早速お米と卵、鶏肉のお食事に変えて実践してくださっていました。
ご自身のからだと真摯に向き合おうと、できることから前向きに取り組まれている姿がとても印象的でした。
前回の施術の後、気になっていた腰の痛む頻度は少し落ち着いてきたとのこと。
でも、今回の雨や雷のような急激なお天気の崩れや、生理前のホルモンバランスの波が重なったことで、強い頭痛と「頭が別空間にいってしまうような感覚」が出てしまったそうです。
「以前、テレビや本で見て耳を引っ張ったり回したりする体操をやったことがあるんです。でも、調子が悪くなってからやると、かえって痛みが強く感じちゃって……」とMさん。
良かれと思って試したケアでも、からだの状態によっては負担に感じてしまうことがあります。
実際にMさんのお腹や背中、首すじにそっと触れさせていただくと、奥深くの筋肉がぎゅっと張り詰めて、強い緊張を抱えていました。
触れられると少し痛みを感じる場所や、カチカチに硬くなっている場所。
それは、日々の責任感やお仕事のプレッシャー、そして外側の気圧の変化から自分を守ろうとして、からだが全身を防波堤のように固めて支え続けてくれていたサインでした。
からだで起きていたこと・安心を思い出すアプローチ
雨の前や気圧が急変するとき、私たちのからだの外側では空気の圧力が大きく変化しています。
その変化にからだを適応させようと、内耳のセンサーや自律神経、そして脳はフル稼働でバランスを保とうとします。
特に、普段から周りのために気を配り、真面目に頑張り続けている方ほど、無意識のうちに脳の「警戒モード」がオンになりやすくなっています。
常に緊張の糸が張り詰めているところに、気圧の急低下や天候の急変という大きな負荷が加わると、脳は「これ以上は危険だ!」「一旦立ち止まって!」と強いブレーキをかけます。
そのブレーキこそが、頭をボワンとさせて思考を止めたり、まるで別空間にいるような感覚にして刺激を遮断しようとする、からだの防衛反応なのかもしれません。
そんなとき、硬くなった場所を力づくで揉みほぐそうとしたり、無理に刺激を与えたりすると、警戒している脳は「さらに攻撃された」と受け取って、ますます緊張を強めてしまうことがあります。
Mさんが感じた「調子が悪いときに耳を触ると余計に痛く感じる」というのも、まさにセンサーが過敏になっていたからこそ起きた自然な反応かもしれません。
必要なのは、強い刺激でどうにかすることではなく、緊張が集まっている深い部分に、「もう警戒を解いても大丈夫だよ」という安心のサインを届けてあげることです。
施術が進むにつれて、カチカチだった背中やお腹の緊張が少しずつほどけ、触れられたときの痛みも「さっきの半分くらいになりました」と柔らかい表情に変わっていきました。
施術の後、ゆっくりとベッドから降りて立っていただくと、Mさんは驚いたようにからだを動かされました。
「あれ……?後ろに引っ張られる感じがします」
さっきまで無意識に前のめりになって踏ん張っていた重心が、自然とまっすぐな位置に戻ったことで、からだが新しいバランスを感じ取ってくれたのです。
「頭のボワンとした重い感じが軽くなりました。目の前がシャキッとして、ちゃんと視界がひらけた感じがします」
「鼻から息を吸ったとき、呼吸がすごく深くまで入ってきます」
無理に力を抜こうと焦らなくても、脳が「ここは安全な場所だ」と安心を思い出すだけで、呼吸は深くなり、視界は明るさを取り戻し始めます。
限界まで我慢するのをやめて、自分との信頼関係を取り戻す
天気の変化や生理の周期が訪れるたびに体調を崩してしまうと、「どうして私のからだはこんなに思い通りにならないんだろう」と自分を責めてしまいそうになるかもしれません。
でも、頭がボワンとしたり、考えが止まってしまうのは、あなたの意志が弱いからでも、怠けているからでも決してありません。
倒れてしまわないように、限界を迎える前に、あなたのからだが懸命にあなたを守ろうとしてくれた結果なのです。
でも、「もうこれ以上、自分をすり減らすのは終わりにしたい」「自分との信頼関係を取り戻して、これからの人生を自分の足で自分らしく歩いていきたい」と願うなら、もう一人で抱え込まなくて大丈夫です。
どんなに少しずつだとしても、その変化の積み重ねこそが、あなたがあなたらしく生きていくための確かな土台になります。
正しいことをじっくり続けていけば、こころもからだも必ず応えてくれる。
私は、そう信じています。


