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「やりたいことがあるのに、何日もずっと夜遅くまでスマホを見続けてしまって……寝不足になるんです」

施術室のベッドの横に腰掛けながら、少し困ったようにそう話してくださったAさん。

日々の生活の中で、やらなきゃいけないと分かっているのになかなか手につかなかったり、誰かからの何気ない言葉を重く受け止めすぎてこころが疲れてしまったり。
そんな中で、夜になるとついスマホを手放せなくなってしまう日が続いていたそうです。

「別に楽しんで見ているわけではなくて……どっちかというと『知らなければ』『知っておかないと』という気持ちなんです」

「人生相談や、『こういう風に考えるといいよ』というノウハウを見ては、知っておいたら役に立つかな、できるかなって……そんな情報ばかり探してしまうんです」

やりたいことがあるのに、夜遅くまで画面を見つめてしまい、翌朝になると寝不足でからだが重くなる。
そんなご自身に対して、どこかやりきれなさを感じていらっしゃるご様子でした。

施術室での対話とからだの様子

「でも、そうやって自分の状況やこころの癖にちゃんと気づけているのは、とても素敵なことですよ」

Aさんのお話を伺いながら、まずそのことをお伝えしました。
自分を外側から眺めて「あ、またこのパターンに入っているな」と気づけること自体が、変化への大切な第一歩だからです。

「今日、どうなって帰れたら一番嬉しいですか?」と伺うと、Aさんは少し考えて、こう話してくださいました。

「スマホをやらなくなる、だとちょっと違う気がして……先にやることを終わらせられた日のように、満足して一日を終えられるようになりたいです」

「1日の終わりに、ちゃんと区切りをつけたいんです。やりたいことが置きっぱなしで残っていると、一日が終わった感じがしなくて」

以前、満足して一日を終えられた日のことを伺うと、
「お風呂など先にやることを済ませて、好きなことを時間まで楽しんで、満足して眠れた日」
があったと教えてくださいました。

その感覚を思い出しながら、ベッドに横になっていただき、からだの様子を確かめていきました。

肩に硬さが残っていたほか、背中やお尻、骨盤のまわりに触れてみると、場所によって「くすぐったい」「ここは痛い」という反応がありました。

実は、触られて「くすぐったい」と感じるのも、からだが敏感に自分を守ろうとしている防衛反応の一つです。
お仕事などで日常的に気を張り詰めていると、からだの警戒モードが解けず、触覚などの感覚が過敏になってしまうことがあります。

無理に押したり揉んだりするのではなく、からだが「ここは安心できる場所なんだ」と思い出せるよう、緊張をそっとほどくアプローチを行っていきました。

触れられる感覚の変化を確かめながら施術を重ねていくと、過敏になっていたくすぐったさや痛みが落ち着き、こわばっていたからだが自然と緩んでいきました。

からだで起きていたこと・安心を思い出すアプローチ

「やりたいことがあるのに、夜遅くまでスマホを見てしまう」。

そんな夜が続くと、私たちはつい「自分は意志が弱いからだ」「時間を無駄にしてしまった」と、自分を責めてしまいがちです。

でも、本当にそれは意志の問題なのでしょうか。

Aさんがスマホで探していたのは、単なる娯楽ではありませんでした。
「どう考えればいいのか」「どうすればうまくいくのか」という、不安を埋めるための知識やノウハウでした。

頭の中では、「知っておかなければ危ない」「ちゃんとしていなければいけない」と、必死に自分を守るための答えを探していたのです。

そしてそのとき、からだの中では何が起きていたかというと、触られるとくすぐったく感じるほどの「警戒モード」でした。

他人の何気ない言葉がグサッと深く刺さってしまったり、外からの刺激に過敏になってしまったりするのも、脳が身構えてアンテナを張り巡らせていたからです。

からだが緊張し、常に「守らなければ」とアンテナを立てている状態では、夜になっても安心のスイッチが入りません。
安心できていないからこそ、脳は「もっと情報を集めて自分を守らなければ」と、スマホを見る手を止められなくなっていたのかもしれません。

だからこそ必要なのは、「スマホを見るのを我慢しよう」と意志の力で自分を縛ることではありません。

まずは、身構えていたからだの緊張をそっとほどいてあげること。
そして、脳に「もうそんなに警戒しなくて大丈夫だよ」という深い安心を届けてあげることです。

からだが安心を取り戻すと、張り詰めていたアンテナも自然と穏やかになり、「知らなければ」という焦りも静かに消えていきます。

限界まで我慢するのをやめて、自分との信頼関係を取り戻す

意志が弱かったのではなく、それほどまでにあなたの頭とからだは、不安から自分を守ろうと懸命に頑張ってくれていたのですね。

先にやることを1つ終わらせて、好きな時間を過ごし、満足して1日を終える。
そんな小さな区切りを1つずつ丁寧につけていくことが、自分との信頼関係をそっと結び直していく確かな一歩になります。

でも、「もうこれ以上、自分をすり減らすのは終わりにしたい」「自分との信頼関係を取り戻して、これからの人生を自分の足で自分らしく歩いていきたい」と願うなら、もう一人で抱え込まなくて大丈夫です。

どんなに少しずつだとしても、その変化の積み重ねこそが、あなたがあなたらしく生きていくための確かな土台になります。

正しいことをじっくり続けていけば、こころもからだも必ず応えてくれる。
私は、そう信じています。




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